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相続で借金を引き継がない方法─相続放棄・限定承認の基礎知識

1. 相続で借金を背負わないために

「相続=プラスの財産を受け継ぐもの」という誤解

相続というと、家や土地、預金といった「プラスの財産」を受け継ぐイメージが強いかもしれません。しかし現実には、被相続人が抱えていた借金や保証債務といった「マイナスの財産」も一括して相続の対象となります。

たとえば、亡くなった親が消費者金融から数百万円を借りていた場合、特に対策をしなければ子がその借金の返済義務を負うことになります。これは「知らなかった」では済まされない法律上の仕組みです。

この記事では、相続を得意とする弁護士が、借金を引き継がないための方法と注意点について、専門家の視点から解説します。

2. 相続放棄と限定承認という選択肢

借金などマイナスの財産を背負わないためには、法律上の手続きが必要です。代表的なのは以下の2つです。

⑴相続放棄

プラス・マイナスを含めて一切の財産を相続しない方法。借金をゼロにできますが、プラスの財産も受け取れません。

⑵限定承認

プラスとマイナスの財産がある場合に、プラスの財産のみを相続する方法。マイナスの財産がプラスの財産を上回った場合は、これを返済する必要はありません。

いずれも「相続が開始したことを知った日から3か月以内」に家庭裁判所へ申し立てる必要があります。期間を過ぎると、原則として、全てを相続する「単純承認」となってしまうので注意が必要です。

3. 手続き前にやってはいけないこと

相続放棄や限定承認を検討している間に、故人の財産を勝手に使ったり処分したりすると「相続を承認した」とみなされます。

例えば、

⑴故人の預貯金を引き出して生活費として使う
⑵不動産や自動車を売却する
⑶賃貸契約を解約し敷金を受け取る

 
などの行為は要注意です。一度「承認」と扱われると、放棄も限定承認もできなくなり、借金をそのまま引き継ぐことになってしまいます(民法921条1号)。

4. 財産状況を調べる具体的な方法

借金の有無を確認するためには、多角的な調査が欠かせません。

⑴郵便物や督促状を確認する
⑵銀行口座やローン契約の有無を調べる
⑶信用情報機関で借入履歴を確認する
⑷保証人契約や取引先の債務を照会する

 
特に保証債務は見落とされやすく、後から突然請求が届くこともあります。相続財産に疑わしい点があれば、遺産に手を触れることなく、弁護士に相談しましょう。

5. 弁護士に依頼するメリット

財産調査は自力でも可能ですが、全容を正確に把握するのは容易ではありません。弁護士に依頼すれば、調査から放棄・限定承認の申し立てまで一括で対応可能です。

さらに、期限が迫っている場合でも、弁護士は家庭裁判所に迅速に申立書を提出し、手続きの遅れによる不利益を防ぎます。実際に当事務所でも「期限まで数日しかなかったが、放棄が認められて借金を免れた」というケースがありました。

6. まとめ─3か月以内に正しい判断と手続を

借金を引き継がないために最も重要なのは、「相続開始から3か月以内」に正しい判断と手続を行うことです。

「うちの親に借金はないはず」と思い込むのは危険です。まずは財産調査を行い、少しでも不安があれば相続に詳しい弁護士に相談してください。それが、後悔のない相続対応につながります。

 

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