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慰謝料は相場だけで決まらない——本当に大切な視点とは

1. 慰謝料の相場?

離婚相談でよく聞かれる質問のひとつが、
「慰謝料って、いくらぐらいが相場ですか?」というものです。

確かに、この疑問は自然な関心事です。実務上も、不貞(浮気)の慰謝料は150万〜250万円程度といった“相場感”が存在します。しかし、ここで知っておくべきなのは、慰謝料は必ずしも相場どおりには決まらないという事実です。
ここでは、一般的に、離婚時に慰謝料が問題となりやすい、不貞、DV(身体的)、モラルハラスメントについて、解説します。

2. 不貞(浮気)の場合

相場に近いが、事情によって変動する

不貞慰謝料は、過去の裁判例から150万〜250万円程度が目安とされ、実務でも比較的相場どおりに判断される傾向があります。

ただし、それでも次のような事情によって金額は上下します。
• 婚姻期間の長さ
• 不貞行為の期間や回数
• 被害の内容や程度
• 相手の経済状況
• 証拠の有無と内容

つまり、不貞の場合でも、「相場+個別事情」で判断されるため、この個別事情をいかに主張、立証していくかが鍵になります。

3. 身体的DVの場合

事例の幅が広く、金額差も大きい

暴力を伴うDV慰謝料には、過去の裁判例が参考になりますが、金額幅は数十万円〜500万円程度と非常に広く、この差は被害の程度や期間、後遺症の有無などによって大きく左右されます。一方、実際に相談者や依頼者が受けた被害内容や程度もさまざまで、単純に過去の裁判例から金額を導くことは容易ではありません。

一般的には、身体的DVの場合、慰謝料の金額を判断するための要素として、次のものがあります。
• 暴力の頻度や継続期間
• ケガや後遺症の有無
• 被害者の生活・就労への影響
• 医療記録や診断書などの証拠の有無

身体的DVは、怪我の写真や診断書など、比較的、証拠を確保しやすいと思われがちですが、実際には、家族や周囲に知られたくなくて証拠をあえて残さない人も多いため、主張立証が容易ではないというケースも少なくありません。

4. モラハラの場合

そもそも認められにくく、立証も困難

モラハラ慰謝料は、実務上きわめて認められにくい傾向があります。その理由は主に次の2つです。
1. 不法行為として評価されるハードルが高いこと
2. 客観的証拠が残りにくいこと

(1)  不法行為として評価されるハードルが高い理由

そもそも、慰謝料は、民法709条を根拠に認められているものですが、これが認められるには、加害行為が社会的に許容される範囲を超えていることを立証しなければなりません。

モラハラの場合、この「許容範囲を超えている」という線引きが難しく、多少の口論や性格の不一致との境界があいまいです。裁判所は「夫婦間では感情的なやり取りはあり得る」という前提で見ているため、単発的・軽度な行為では違法性が認められにくいのです。

(2) 証拠化の難しさ

モラハラは、相手を精神的に追い詰めたり傷つけたりする言動を繰り返す行為ですが、その多くは暴言や無視、威圧的な態度など、目に見える形で傷を残すわけではありません。

そのため、DVのようにケガや診断書といった物理的な証拠がなく、しかも、その場限りの発言や態度で終わることが多く、しかも、突発的に起こるため、後から記録として残すのが難しいという特徴があります。

また、「許容範囲を超えている」と認定してもらうためには、モラハラが、一定期間以上継続して行われていることを立証する必要があるため、録音、メール・LINE、日記などの証拠を継続的に残さなければなりませんが、証拠を残すこと事態が、心理的に負担にもなります。

このようなモラハラに特有の事情が原因で、モラハラは客観的な証拠が残りにくい傾向があります。

つまり、モラハラの場合は「相場」を考える以前に、慰謝料を認めてもらえるかどうか自体が大きなハードルなのです。

5. まとめ

慰謝料の額は「相場」だけで決まるものではありません。

大切なのは、自分が受けた被害とその影響を、根拠を持って主張・立証すること。
相場を出発点にするのではなく、自分のケースに即したストーリーを作り上げることが、最大の鍵です。

もっとも、自分で冷静に被害の内容や証拠を整理し、法的に有効な形に組み立てるのは簡単ではありません。

だからこそ、早い段階で離婚・慰謝料に詳しい専門家に相談し、戦略や証拠収集の方向性を確認しておくことが、最終的な結果を大きく左右します。

 

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