1. 払いたくない人ほど損をする理由
慰謝料の話になると、「1円も払いたくない」「自分は悪くない」といった強硬な態度をとる人がいます。
しかし、この“払いたくない”姿勢が、かえって解決を長引かせたり、余計な請求を招いたりして、結果的に負担が大きくなるケースは少なくありません。
2. 強硬姿勢が相手の「本気」に火をつける
「払う気はない」という態度は、相手にとって挑発になります。
特に不貞や暴力など明確な原因がある場合、このような態度は、「反省していない」、被害を軽視していると受け取られ、相手の怒りや闘争心を一気に高め、事態をこじらせる火種になるからです。
本来なら交渉や調停で「このあたりで手を打とう」と双方が歩み寄って終わるはずだった話も、「払わない」という態度を取り続けることで、話がまとまらず、訴訟に発展することがあります。
一度訴訟になれば、相手も「どうせ裁判まで来たのだから、とことんやる」「絶対に中途半端な条件では終わらせない」と考えるようになり、交渉・調停の段階であればより低い金額でまとまったはずの事案も、結果的に、訴訟になって、弁護士費用などの費用をかけた挙げ句、より高い慰謝料の支払いをしなければならなくなった、ということも少なくありません。
さらに、解決までの時間や精神的負担も大きくなり、総合的なコストは交渉や調停段階よりもはるかに重くなります。
3.「否認」の落とし穴
裁判では、明確な証拠があるにもかかわらず、それを否定すると、「嘘をついていた」「反省していない」と受け取られることもあり、裁判官の心証を悪くする要因になります。
場合によっては、これが原因で金額が上乗せされることもあり、判断全体に影響を与えることもあるのです。
4. 実務であった“余計な請求”の例
当事務所が過去に担当した事案で、DV加害者が、離婚慰謝料の支払いを拒み続けた結果、離婚慰謝料に加えて、過去の怪我の「入通院慰謝料」を上乗せして請求されたケースがありました。
本来なら別途請求されなかったはずの項目まで争点にされ、最終的な金額負担が大きくなった一例です。
5. 戦略的な解決が損失を防ぐ
慰謝料問題は感情論ではなく、
• 証拠の有無や強さ
• 相手の主張の弱点
• 訴訟リスクと費用対効果
を見極めることが重要です。
早期に冷静な条件で示談を成立させる方が、結果的に時間・費用・精神的負担を抑えられることは多いのです。
強硬な拒否は、金額だけでなく「争いの範囲そのもの」を広げ、不要な損失を招きかねません。
6. まとめ
“払いたくない”という姿勢は、解決をこじらせ、かえって自分を不利にすることがあります。
大切なのは、認めるべきところは認め、事実と異なる部分は否認し、自分の主張をしっかり尽くすというメリハリです。
この見極めは感情が入りやすく、当事者だけでは難しいことも多いもの。
だからこそ、早い段階で専門家に相談し、戦略的に対応することが、最終的な負担を減らす近道になります。