1. 慰謝料は「離婚すればもらえるお金」ではない
離婚の相談を受けると、よく「慰謝料は取れますか?」という質問が出てきます。
しかし、経験上、この問いから始まる離婚ほど、問題の本質が見えにくくなることが多いのです。
まず大前提として、慰謝料は「離婚にともなって当然に発生するもの」ではありません。
法的に認められる慰謝料は、次のような「不法行為」がある場合に限られます:
– 不貞(不倫)
– 暴力(DV)・モラルハラスメント
– 悪意の遺棄 など
一方的に離婚を切り出された、性格の不一致で揉めた、というだけでは、慰謝料は認められません。
2. 「お金で清算する」発想が冷静な判断を妨げる
慰謝料という言葉には、ある種の“報復”や“正義の回復”といった期待が込められることがあります。
しかし、実務上、慰謝料は数十万円〜200万円が相場であり、財産分与や養育費の総額に比べれば、金額的には小さいことも多いのです。
にもかかわらず、慰謝料を中心に据えてしまうと、
「謝らせたい」「懲らしめたい」といった感情が交渉を難しくする
といった事態に陥ることもあります。
3. 「本当に解決すべき問題」は別にある
慰謝料をめぐる争いが過熱する一方で、財産分与についての確認が疎かになっていたり、養育費の検討が不十分であったり、面会交流の具体的条件が曖昧なままだったり、むしろ、今後の生活に直結する重要な部分の話合いが疎かになってしまうことがあります。
これは、離婚の根本的な課題が、「相手を責めること」ではなく、「自分と子の今後の生活を整えること」であるという視点を見失ってしまうからです。
4. 終わり方を間違えないために
慰謝料は、正当な請求であればもちろん行うべきですが、そこに“こだわりすぎる”ことで、本来確保すべきものを見失うことは避けなければなりません。
“取り返す”よりも、“整える”。
その視点を持つことが、結果として冷静で有利な解決につながります。
慰謝料に限らず、離婚の交渉では感情と生活設計の両方を整理する必要があります。
弁護士が関与すれば、法律の専門家としての第三者の視点が加わり、感情に偏らない冷静な解決が可能になります。