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知的財産法

【著作権法】著作権侵害の対処法-初動対応から具体的手段の基本

1. 著作権侵害を発見したら

自分が時間と労力をかけて生み出した文章やイラスト、写真、楽曲。ある日、インターネットを見ていると、そっくりなものが他人のブログやSNSに掲載されている。クレジット表記もない。

怒りや不安を覚えつつも、「どう動けばいいのか?」と戸惑う方は少なくありません。

この記事では、著作権侵害とインターネット問題に注力する弁護士が、削除申立て・発信者情報開示請求・損害賠償請求など、インターネット上で著作権を侵害された場合の基本的な対処法についてお伝えします。

2. 著作権侵害とは何か

著作権法は、創作性のある表現を「著作物」として保護します。

その対象は、従来からの典型的な著作物である 小説・詩・絵画・イラスト・写真・音楽・映画・建築作品 に加えて、現代社会では インターネットやSNSで流通するデジタルコンテンツ に大きく広がっています。

具体的には、

⑴ InstagramやX(旧Twitter)の写真・動画・イラスト
⑵ YouTube動画、ゲーム実況、ライブ配信やアーカイブ
⑶ ブログ記事やニュースサイトの記事、デジタル広告のコピー
⑷ Webデザイン、アプリのUI、プログラムコード

といったものも含まれます。

これらを無断でコピー、転載、再配信する行為は、原則として著作権侵害にあたります(著作権法21条以下)。

もっとも、アイデアそのものは保護されず、引用(著作権法32条)など正当な利用が認められる場合もあります。

3. 侵害を疑ったときの初期対応

権利者がまず行うべきは、感情的な抗議ではなく「証拠の確保と状況整理」です。

⑴ 証拠の確保

相手がサイトを閉鎖したり投稿を削除したりすれば、立証は困難になります。GoogleクロームのPDF印刷や、Windowsの画面キャプチャなどを利用して、URL、投稿日時等を保存するなど、著作権侵害の証拠化を図ります。

なお、ネットの画像を保存する際には、サイトのURLも含めて手軽に保存することができるPDF印刷がおすすめです。

⑵ 著作権侵害の成否の判断

侵害を主張するには、単に似ているという印象だけでは足りません。著作権侵害が成立するかどうかは、多くの場合、①類似性 と ②依拠性 の二つの要件を満たすかによって判断されます。

①類似性

著作物の「表現上の本質的な特徴を直接感得できるかどうか」が基準とされます。

著作物はアイデアそのものを保護するのではなく、具体的に表現された部分を保護します。したがって、テーマやモチーフが同じでも、具体的な表現の本質的特徴が再現されていなければ著作権侵害にはなりません。逆に、細部を少し変えただけで、具体的な表現の本質的な特徴が再現されていれば著作権侵害となります。

この類似性の判断は、この部分だけで一冊本が書けるほど、著作権実務上、最も難しいテーマの一つです。

②依拠性

依拠性とは、平たく言えば「著作物の存在を知った上で、これを利用して作品を作ったか」どうかということです。自分が作った作品が、偶然他人の作品に似ていた場合、著作権侵害にはなりません。

例えば、公開されていない社内資料が外部で使われていれば依拠性は認められやすいですし、作品へのアクセス可能性や制作時期の近さなども重要な判断要素となります。

補足:侵害の判断は専門家へ

著作権侵害の成否は、法律論だけでなく、作品の性質や利用実態を踏まえた専門的な判断が必要です。一見似ているようでも侵害に当たらない場合もあるため、安易に「似ているから侵害だ」と決めつけるのは危険です。

著作権侵害ではないのに、警告書などによって権利侵害を主張すると、場合によっては、業務妨害や不正競争行為等の責任を問われるリスクがある以上、著作権侵害の成否は、弁護士による専門的な鑑定を行うことをおすすめします。

⑶ 損害の把握

売上減少、信用の毀損、二次利用の拡散など、具体的な影響を整理します。実際の売上減少やブランド毀損など、経済的影響を可能な限り具体的に評価します。損害額の金銭評価は、後の交渉で説得力を持たせるために欠かせません。

4. 具体的な対応手段

著作権侵害を解決するための具体的な手段は概ね下記の通りです。相手方の対応や、ビジネス上の判断によって、適切な手段を選択します。

⑴ プラットフォームへの申立て

YouTubeやSNS、ECサイトには著作権侵害通報制度が整っています。まずは削除要請を行い、拡散を防ぐのが最も迅速です。ただし削除だけでは再投稿の恐れがあり、根本的解決には至りません。

⑵ 発信者の特定

削除では不十分で責任追及が必要な場合には、発信者を特定しなければなりません。そのために用いられるのが 発信者情報開示請求 です。裁判所を通じてプロバイダやプラットフォームから契約者情報を取得し、相手を明らかにすることが出発点となります。

⑶ 任意の交渉

発信者が特定できれば、内容証明郵便やメール、場合によってはDM(ダイレクトメッセージ)などで、侵害者に対して直接謝罪や損害賠償を求める交渉に入ります。相手が応じれば比較的早期に解決できます。

⑷ 知財調停

裁判所の知財調停を利用することで、第三者を介した話し合いによる解決を目指す方法もあります。非公開で進められるため、取引先や市場への影響を抑えたい場合に適しています。もっとも、調停に出席する義務はないため、当事者のいずれかが出席しなければ調停で紛争を解決することはできません。

⑸ 訴訟

当事者の話し合いで解決できない場合には、訴訟で強制的に紛争を解決します。もっとも、ケースによっては、話し合いをすることなく、最初から訴訟を提起する場合もあります。調停と異なり、訴訟を欠席すると、欠席判決が出され敗訴してしまうため、当事者は訴訟に対応せざるを得ません。時間やコストはかかりますが、確実な決着を図る手段です。

⑹ 刑事告訴

悪質な侵害行為については刑事事件として告訴することも可能です。著作権侵害で有罪になると、侵害者本人には最大で十年の拘禁刑や1,000万円の罰金刑が科され、法人にも最大で3億円の罰金刑が課されることから(著作権法119条、124条等)、特に組織的・反復的な侵害には有効な抑止力となります。

もっとも、刑事告訴を警察や検察に受理させるためには、被害の大きさや、著作権侵害を裏付ける確実かつ相当量の証拠が必要です。仮に、侵害者が刑事罰を受けても、民事上の損害が自動的に賠償されるわけではないため、刑事告訴は最後の手段であり、民事的な対応と併せて慎重かつ戦略的に判断する必要があります。

5. まとめ-弁護士の関与が不可欠

著作権侵害は、削除以外にも、発信者の特定、損害額の立証、再投稿への備えなど、専門的な対応が求められる複雑な問題です。

現実問題としても、プラットフォームへの申立を除き、素人が自力で対応するのは極めて困難です。著作権侵害に本気で対処するなら、著作権の紛争解決に精通した弁護士への依頼をおすすめします。

 

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