1. 契約書は作って終わりではない
「契約書を交わしたから安心だ」──そう思っている経営者は少なくありません。
しかし、その安心感はしばしば錯覚に過ぎません。実務で実際に契約書を確認すると、署名欄が空欄のまま放置されていたり、更新期限が数か月前に切れていたり、現状の取引内容と全く合致していないというケースが珍しくありません。
契約書は作成した時点で役割を終えるものではなく、むしろ“作った後”こそがリスク管理の本番です。
この記事では、契約書のリスク管理の重要性について、企業法務を得意とする契約実務に精通した弁護士の視点から解説します。
2.「不備」より「リスク管理の怠慢」
契約書自体に問題がなくても、次のような運用上の怠りが、契約トラブルの温床となります。
・更新時期を過ぎても放置してしまった
・実際の取引条件が変わったのに、契約書を書き直していなかった
・担当者が交代し、誰も条文の意味を把握していなかった
こうした“リスク管理の怠慢”によって、契約書があるにもかかわらず「使えない紙切れ」と化してしまいます。特に、複数年にわたる業務委託契約やライセンス契約、共同事業契約では、現場が日々変化しているのに、契約書だけが置き去りになるケースが非常に多いのです。
3. 組織としての管理体制がカギ
実務において求められるのは、契約書を作ることはもちろん、それを“組織として管理する仕組み”を持つことです。
たとえば、次のような体制整備が重要になります。
・契約更新や終了の時期をアラートで管理する仕組み
・契約内容を現場の担当部署が理解し、履行可能性を判断できる状態にしておくこと
・定期的な契約内容レビュー(特に自動更新条項や履行状況のチェック)
・不履行時に備えた対応マニュアルや通知文書の雛形準備
こうした取り組みは、単なる「書面の保管」から一歩進んだ“契約管理”を実現します。
4.「法務部任せ」が招くリスク
契約書の内容を理解しているのが法務部だけ、という企業では、現場と契約の内容が乖離しがちです。その結果、トラブルが発生したときに「そんな条件だとは思っていなかった」という言い訳が飛び交い、迅速な対応ができなくなります。
一方で、現場の担当者まで契約内容を正しく理解している企業では、リスクの芽を早期に摘み取ることが可能です。契約管理の成熟度は、そのまま企業文化の成熟度を映し出すものと言えます。
5. 契約のリスクを管理するために
契約書を紙切れにしないためには、日常的に契約内容を見直し、取引先や法改正の変化を踏まえて随時リスク管理をしておく必要があります。
もちろん、これを自社だけで常に実行できれば理想的ですが、実際には通常の企業が日常業務の中で契約リスクを継続的に監視し続けるのは容易ではありません。だからこそ、外部の契約の専門家──特に企業法務に精通し、契約実務に長けた弁護士の関与を検討すべきです。
本気で契約のリスク管理をお考えであれば、契約実務に精通した弁護士に相談されることをおすすめします。